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「アンケート調査の徹底」では、いじめはなくならない

知ったかぶりでは許されない「学校のリアル」 第10回

◆教員に問題を丸投げする文科省

 いじめ防止対策として、文科省は何をやってきたのか。いじめ防止対策推進法の前にも文科省は、いじめ問題関連でいろいろな通知をだしている。たとえば、「いじめ問題への取組の徹底について」は2006年10月にだされたものだ。内容はといえば、「学校教育に携わるすべての関係者一人ひとりが、改めてこの問題の重大性を認識し、いじめの兆候をいち早く把握して、迅速に対応する必要があります」という通知内の文章に象徴されるように、学校や教員に対処を求めているにすぎない。いじめ防止対策推進法にしても、道徳教育の充実、早期発見のための措置、相談体制の整備などを学校や教員に求めているにすぎない。いわゆる、「丸投げ」である。

 そして、文科省が教育委員会に再三にわたって要求しているのはアンケート調査の徹底である。教員の多忙が問題になっているが、多忙の大きな要因として提出する書類の数が多さが指摘されている。いじめのアンケート調査も、教員の多忙につながっているわけだ。多忙であれば、当然ながら生徒と接する時間は減る。そのため生徒の状況をじゅうぶんに把握できなくなり、いじめの前兆があったとしても対処が遅れることにもつながっている。

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前屋 毅

まえや つよし

フリージャーナリスト。1954年、鹿児島県生まれ。法政大学卒業。『週刊ポスト』記者などを経てフリーに。教育問題と経済問題をテーマにしている。最新刊は『ほんとうの教育をとりもどす』(共栄書房)、『ブラック化する学校』(青春新書)、その他に『学校が学習塾にのみこまれる日』『シェア神話の崩壊』『グローバルスタンダードという妖怪』『日本の小さな大企業』などがある。


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